やる気の法則
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■なぜ、秋田県の学力は高いのか?
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子どもたちが自分たちの人生を生きていくうえで真に役立つ“生きた学力”を身につけていくべきだよという話をしました。
この“生きた学力”を育てるヒントが秋田県の取り組みに活かされている、というところで話が終わっていましたよね。
・・・ということで今回は、(文科省の全国学力調査でもトップの成績を誇る)秋田県の学力のヒミツに迫ってみたいと思います。
なぜ秋田県が?
そう思う人も多いことでしょう。
都心部や大阪など、人口が多い地域の方が塾も多いし、中学受験なども盛んで学校よりも進んだ勉強もしている。
もし、全国すべての学校が同程度の教育レベルを維持していると仮定すれば当然、都心の方が学力が高くなるはず。
しかし、結果は周知の通り。
成績上位の県を挙げてみても、秋田、福井、富山、香川、石川、青森・・・。
というように、人口が少なく教育サービスが受けにくい地域の方が学力が「高い」傾向にあるのです。
不思議だなぁと思う人も多いことでしょう。
それでは、その不思議を今から解きほぐしていくことにしましょう。
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■秋田の学力を押し上げた3つの理由。
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マスコミや雑誌、書籍を見るといろいろな秋田の分析等が載っています。
ここで3つほど代表的な分析を挙げてみましょう。
ひとつめは、「早寝・早起き・朝ごはん率」の高さです。
秋田では、他県に比べて早く寝、早く起き、朝ごはんを食べる子どもが多い。
だから、学力が高いんだと。
これは「風車理論」で説明することができます。
朝食を食べれば排便があり、体温も上昇して体調もよくなる、だから学校でも集中して勉強できる。
学校で力を出し切るので心地よい疲れが出て、夜熟睡できる。
だから目覚めもスッキリ、朝食を食べて、排便があり・・・というように好循環を風車のようにぐるぐると回していくのです。
これが「風車理論」です。
要は、「早寝・早起き・朝ごはん」というように生活習慣を改善すれば、学力も上がるよという主張です。
秋田では「早寝・早起き・朝ごはん率」が高い。
つまり、生活習慣が確立している。
だから、学力も高いんだよというのが一つ目の分析です。
まぁ、風車理論といってもこんなにうまく回るとは思えませんが、良い影響が出やすいことは確かでしょう。
次に、二つ目の分析は、「学力と運動」との関係です。
運動能力の高い県ほど学力も高いというものです。
これは、文科省のデータをもとに分析したものです。
確かに、学力と運動には大きな相関があると私も考えています。
特に「走ること」と「脳の活性」には深いつながりがあると言われています。
それに、ちょっと中高生のころを思い出してみてください。
本当に頭のいい子は、勉強だけの「ガリ勉タイプ」の子よりはむしろ、スポーツもやっている「文武両道タイプ」の子が多かったのではないでしょうか。
そして最後。
三つ目の分析は、秋田の「家庭での学習習慣」についてのものです。
これは、秋田が他県にくらべて、家庭での学習時間が「長い」というデータをもとにしています。
ぱっと見ると、「なーんだ、たくさん勉強してるから学力が高いのね。」と思うかもしれません。
しかし、大事なのは「どうして学習時間が長いんだろう?」と考えることです。
実際に秋田の人の話を聞くと、何も言われなくても自分から机に向かう習慣がある子が多いようです。
何ともうらやましい。そう思った人も多いかもしれません。
では、どうして自分から机に向かおうという気になれるのか?
秋田の家庭学習には何か子どものやる気を引き出す秘訣があるんじゃないか?
私は、そんなことを考えながら秋田に関する書籍などを調べていきました。
すると、ひとつ気になるものが見つかったのです。
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■考える力を伸ばす家庭学習ノート
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私が気になった、子どものやる気を引き出すもの。
それが、「家庭学習で使うノート」でした。
(同じような取り組みをしている学校は全国的にもありますが、その違いに注目して読んでみてください。)
このノートは、家庭学習用として使われているもので毎日、学校に提出します。
じゃあ、一体何をノートに学習するのか?
実は、このノート、何を学習するかは、本人の自由なのです。
漢字練習をしてもいい、自分の好きな分野の調べ物をしてもいい、計算問題を解いてもいい。
自分の興味・関心をベースに自分の好きな勉強をするためのノートなのです。
「学習するテーマを自分で決める」ということは、
「自分のアタマで何をやるのかを考える」ということ。
だから自然と考える習慣が身についていくんですね。
この、考える力を伸ばす家庭学習ノート。
そのメリットはこれだけではありません。
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■地域と学校間のコミュニケーション
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そして、ここからがさらに大事なポイントなのですが、秋田の家庭学習ノートには考える力を伸ばすだけではなく、やる気を維持し、興味や関心の幅を広げていくための仕組みもあるのです。
その仕組みが保護者・担任教師からのコメントです。
子どもが学習したノートに対して、保護者と担任教師がそれぞれコメントを残していきます。
親からの励まし先生からのほめ言葉、自分の努力を認めてくれるひと言。
こうしたコメントが子どもたちのやる気を維持し、興味や関心の幅を広げてくれるのです。
ちょっとしたコメントでも、それが大きな励みになります。
小学生時代、提出したノートにひとりひとりコメントを書いてくれる先生がいました。
子どもたちはみな、そのコメントが気になるらしく、みなノートが返ってくると真っ先にコメントを読んでいました。
子どもにとっては先生や親からのコメントを読むのがご褒美であり、楽しく嬉しい瞬間なんです。
そして、このコメントは、親と子、先生と生徒のコミュニケーションだけでなく、同時に親と先生間のコミュニケーションをも深めています。
先生はこんな風に子どもを見ているんだ、
○○のお母さんは、こういう視点で子どもを育てているんだな。
そんな、意思の疎通がおこなわれていきます。
家庭と学校、地域と学校とが互いに協力しあい、地域ぐるみで子どもたちの学力アップを目指していく──。
そんな雰囲気こそが今の時代には特に必要なのでしょう。
秋田では、子どもの登下校時には皆が挨拶を交わし、地域みんなで子どもたちを育てていく。
そんな温かい雰囲気があるようです。
実は、秋田の本当の強さは、こうした地域と学校との連携にあるのかもしれません。
学力低下の問題は、どうしても学校側の指導方法に目が行きがちですが、こうした地域連携の取り組みが学力向上の「根」になると私は考えています。
地域の学力アップは、こうした「地域の根」をしっかり張りながら幹や枝葉の部分である指導方法を見直していくこと。
そこがカギになると思うのです。
秋田県の学力のヒミツ。
それは、家庭と学校とのコミュニケーション。
そして、両者を日々つなぎ続ける一冊のノートにあると私は考えています。
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今取り組んでいるヨコミネ式保育にも通じる部分があると感じました。
「学力と運動」の関係についてですが、園で取り組んでいる、読み、書き、計算、音楽、体操、かけっこにおいても、幼児の成長を見ていると関係があるように思います。
特に、運動面で自信をつけると、それが他の活動にも影響を与え、頑張りが見られます。
また、取り組んでいる内容は、それら自体ができるようになるだけでなく、自らが考え取り組む「自学自習の習慣」を身につけることを目的としています。
「保護者、担任からのコメント」は、まさに「子どもは認められたがる」という4つのスイッチのうちの一つです。
幼児期にしっかりと身につけられるようにすること、それが幼稚園と家庭との役割です。